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妊婦の自殺の報道を受けて

  • 2018.09.13

    「出産したあと1年未満の間に自殺した女性はおととしまでの2年間に少なくとも92人に上ることが、国立成育医療研究センターの調査で初めてわかりました。」衝撃的なニュースで、NHKニュースをはじめ全国紙が報じています。

    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180905/k10011610531000.html

    一見すると、妊婦の自殺が多いと読めますが、そういうわけではありません。むしろこの数字だけだと妊婦の自殺は普通の人よりも少ない可能性だってあります。

     

    平成27年の人口動態統計月報年計(概数)の概況(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai15/dl/gaikyou27.pdf)を見ると、20代から40代の女性の自殺での死亡率は10万人あたり10人程度(※20-40代の男性の自殺は10万人あたり25-30人と女子よりさらに多い)です。一方年間出生数は100万なので妊婦も同数の100万人/年です。自殺が2年で92人なので単年では46人。10万人あたりだと妊婦の自殺死亡は4.6人となります。この差はもしかしたら、研究チームもHP上(https://www.ncchd.go.jp/press/2018/maternal-deaths.html)で書いているように、人口動態統計にレコードリンケージする際にうまく捕捉できなかったためかもしれません。

     

    しかしいずれにせよ、今回の「研究結果」の解釈は「妊婦」がたくさん自殺している、産後うつをどうにかしないと、というより、若者の自殺がそもそも問題なのだと思います。(もちろん産後うつに対するケアの重要性を否定するものでは決してありませんし、重要なアプローチポイントだと思います。念の為。)

     

    ちなみに、日本の自殺者数は2007,8年ごろをピークに減少し、年齢階級別自殺率も減少しています。しかし、大きく減ったのは40代、50代の自殺であり、10代、20代、30代の自殺死亡率はほとんど変わっていません。(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/jisatsu/16/dl/1-03.pdf)

    また、10-34歳の自殺死亡率は世界の先進国の中で日本が突出して高いです。(10万人あたりの自殺者数:日本18.1人、米国12.8人、カナダ12人、フランス9.3人、ドイツ7.6人、イギリス6.6人、イタリア4.8人)

     

    ストレスチェックテストは自らのストレスと心の状態を知るよい機会です。「高ストレス」と判定された方はぜひ一度、産業医と面談してみることをおすすめします。

    なお、既出の成育医療センターのHPでは報道よりも正確に本研究の意義を伝えていますので、お時間がありましたらぜひお読み下さい。

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