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熱中症とWBGT

  • 2018.09.07

    9月に入りましたが、まだ暑い日が続いていますね。
    7〜8月は本当に暑くて、少し外へ出ただけでめまいがするほどでした。
    マスコミでも夏の暑さや熱中症による死者等について多く報道されていたので、今年は何か違うと感じている方も多かったかと思います。

     

    そんな夏の暑さを物語るデータを一つご紹介したいと思います。
    環境省熱中症予防情報サイトでは「WBGT(暑さ指数)」や熱中症に関する情報が掲載されています。
    WBGT(暑さ指数)は、「気温」「湿度」「輻射熱(ふくしゃねつ)」の3つを取り入れた温度の指標です。
    気温だけでなく、湿度や日差しの違いを考慮した数値となっています。
    WBGTが28度を超えると熱中症の危険が高くなります。31度を超えると原則運動は禁止で、高齢者は室内にいても熱中症の危険性が高くなります。

     

    7月の東京のWBGTを過去3年分みてみましょう。
    WBGT≧28度の日数は2016年、2017年、2018年でそれぞれ15日、25日、26日でした。
    また、WBGT≧31度はそれぞれ2日、5日、14日でした。
    今年の7月は、WBGTが31度を超える危険な暑さの日が、去年の約3倍、月の半分もあったことがわかります。
    対応するように東京都の熱中症による搬送者数は1099人、1734人、4430人と飛躍的に増加しています。

     

    8月もみてみましょう。
    WBGT≧28度の日数は2016年、2017年、2018年でそれぞれ25日、22日、24日でした。
    また、WBGT≧31度はそれぞれ6日、8日、16日でした。
    やはりWBGTが31度を超える危険な暑さの日が、去年の2倍、月の半分あったのですね。
    搬送者数は2016年、2017年がそれぞれ1173人、1045人。
    2018年は集計がまだ出ていませんが、8月6日から20日までの速報値で1431人と昨年を上回ることは確実です。

     

    暑さにも「慣れ」があります。しかし今年のように梅雨から夏にかけて急激に気温が上昇すると、体がついていけなくなり、熱中症になりやすいのです。7月の救急搬送人数が特に多かったこともそれを示唆しています。
    夏本番というと8月を思い浮かべますが、7月から冷房をつけたり、帽子をかぶったり、水分補給に気をつけたり、しっかりと暑さへの準備をすることが大切ですね。

     

    「昔は暑い中でも頑張って働いた」とおっしゃる方もいるでしょう。
    しかし、日本の夏はもはや根性だけではどうにもならなくなってきていますし、熱中症は命の危険もある重篤な疾患です。
    職場における熱中症対策については、厚生労働省の平成21年の通達が参考になります。

     

    第一に、作業場のWBGTの低減に努めることが大事です。
    直射日光や照り返しを防ぐ簡単な屋根を設けたり、通風・冷房設備を設けることは非常に有効です。
    なお、打ち水、は気温低下に効果的ですが、風通しの悪い高温多湿な場所では散水後の湿度が上昇し逆効果になることがありますので注意が必要です。
    湿度が75%を超えると、汗をかけず、体温調節ができなくなるので、かえって熱中症になりやすくしてしまいます。

     

    第二に、連続作業時間を決め、休憩をしっかりとって下さい。
    冷房を備えた休憩場所が望ましいですが、最低限日陰等の涼しい場所で、水分と塩分の補給を簡単にできるようにしておくことが必要です。
    作業者は通気性のよい服装や帽子を着用して下さい。
    また、暑さには「慣れ」があるので、新たに高温多湿な作業に従事する場合や、長期間のブランクがあった場合には、
    徐々に時間を長くするなどの注意が必要です。
    個人レベルでは睡眠不足、体調不良、前日等の飲酒、朝食の未摂取等が熱中症になりやすいので、
    日頃の体調管理も必要ですね。

     

    まだまだ暑い日が続くことが予想されています。
    職場全体でWBGTを参考に、安全で適切な環境を整備し、暑さを乗り切りたいですね。

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