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マインドフルネスのエビデンス


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    マインドフルネスという言葉は、2007年にGoogle社が企業研修に取り入れたことで有名になりました。また、iPhoneのヘルスケアアプリにはデフォルトでマインドフルネスの項目があります。数多くの本も出版されており、本屋でみかけたことがある人もいるでしょう。
     

    一方で、マインドフルネスという言葉に、一握の怪しさや宗教的な香りを感じる方も多くおられると思います。今回はマインドフルネスについて、できるだけフラットに解説します。
     

    マインドフルネスは、1979年にジョン・カバット・ジンがマサチューセッツ大学にマインドフルネスセンターを設立したことから始まります。元は仏教の瞑想に由来するといわれ、「今この瞬間の自分の体験に注意を向けて、現実をあるがままに受け入れる」ことだとされます。もともとは慢性疼痛を対象としたものでしたが、現在はうつ病や職場でのメンタルヘルスなどより広範囲の人々を対象にした数多くの研究結果が出されています。
     

    例えば、2014年にPLOS ONEに掲載されたRCTのメタアナリシス論文で、マインドフルネスは、不安障害には効果ないが、うつ病には潜在的な効果がある、と結論付けられています。PLoS One. 2014 Apr 24;9(4):e96110.
     

    2018年に同じくPLOS ONEに掲載されたシステマティックレビュー論文では、従業員のメンタルヘルスについての効果について検討され、感情の消耗・バーンアウト、ストレス、精神的苦痛、うつ、不安、仕事上のストレスについて、強い効果が認められました。但し、本研究は23の研究に基づく24の論文についてレビューされましたが、研究の質についてはばらつきが大きかったことには注意が必要です(2つの研究はハイクオリティ。15はミディアムクオリティ。6はロークオリティ).
     

    また、英国のNICE(国立医療技術評価機構)は、過去に3回以上うつ病を経験した人のうつ病を予防する方法として、マインドフルネスベースの認知行動療法を推奨しています。
    https://www.nhs.uk/conditions/stress-anxiety-depression/mindfulness/
    https://www.nice.org.uk/guidance/cg90/ifp/chapter/How-can-I-stay-well-in-the-future
     

    英国のNHS(国民保険サービス)は、精神的な健康への5つのステップをHP上で公表しており、
    Connect:人とつながること
    Be active:体を動かすこと
    Keep learning:料理でも楽器でも自転車の修理でもいいので、新しいスキルを身に着けていくこと⇒自信につながる
    Give to others:ありがとうと言う、笑顔を向ける、地域のボランティアなどをすること⇒ソーシャル・ネットワークにつながる
    Be mindful:現在の瞬間に気づくこと。感情や身体や、周囲の世界について知覚すること。
    としています。
    https://www.nhs.uk/conditions/stress-anxiety-depression/improve-mental-wellbeing/
     

    さて、実際のマインドフルネス自体は、安易に一人でやるよりもコースを受講したり先生と一緒に行ってほしいのですが、流れについて概説しますと、
    1. 目を閉じて呼吸を整える
    2. 周囲の音に耳を傾ける
    3. 自分の呼吸に意識を向ける
    4. 自分の内面に注意を向ける

    というふうになります。これらを10-15分程度で行います。
     

    ポイントは、周りの音や呼吸に意識を向けること、思考は一休みすること、自分の感情や感覚を客観視すること、です。もし眠くなったらそのまま眠ってしまってよいですし、思考がたくさん出てきても思考が出てるな、くらいに思うので大丈夫です。但し、途中で気分不快が強くなったら直ちに中止して下さい。
     

    現代社会では、多くの方が仕事や生活に追われて、自分のことを見つめる時間が取れていません。また、学校教育や受験勉強でも、「作者の考え」を解答することはあっても、自分の内面を見つめる機会は非常に限られていると思います。しかし、自分は何が好きで、何が嫌いで、何が得意で、何が苦手か。また、大切にしたいことや人生の優先順位は何なのか、は行きていく上でとても大切なことです。仕事が辛い原因に、これらと仕事のミスマッチがある場合が多くあります。マインドフルネスを、自分を見つめ直す一つの方法論として、取り組んでみてもよいかもしれません。

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