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【復職支援】うつと肥満:休職中の食生活について


  • うつと肥満の意外な関係
    うつの人はご飯が食べられなくて痩せている、というイメージが一般的にはあると思います。しかし、最近の研究では、うつの人の肥満は想像以上に多く(米国では43%)、うつと肥満は発症機序にも多くの共通点があるということがわかってきました。(Depression and obesity: evidence of shared biological mechanisms. Mol Psychiatry. 2019;24:18-33.)うつ-肥満連関」と呼ばれ、うつ病の方は太りやすく、太っているとうつになりやすいのです。
     

    肥満のみならず、うつの治療においても食事の管理は非常に重要です。
    うつの人は食事が偏りやすく、よくない食生活はうつを悪化させると言われていますし、逆によい食生活はうつを減らすと言われています。
    (The effects of dietary improvement on symptoms of depression and anxiety: a metaanalysis of randomized controlled trials. Psychosom Med. 2019)
     

    しかし、太っているうつの人に、食事制限をしてもよいのでしょうか?食事制限が余計にストレスになりうつが悪化してしまうのではないでしょうか?
     

    2019年3月にJAMAという超一流医学誌に掲載されたランダム化比較試験の結果を見るに、そのような心配はなさそうです。同研究では、BMI30以上(アジア人は27 以上)の肥満の抑うつ患者(PHQスコア≧10)に対して、糖尿病に対する食事運動療法がベースの体重減少治療+うつに対する行動療法を行った所、コントロール群よりも、うつスコア(SCL20スコア:-0.3vs-0.1)、体重(BMI:-0.7vs-0.1)共に減少したのです。
    (Effect of Integrated Behavioral Weight Loss Treatment and Problem-Solving Therapy on Body Mass Index and Depressive Symptoms Among Patients With Obesity and Depression: The RAINBOW Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019;32:869-879.)
     
     

    うつで休職中に気をつける、健康的な食生活のポイント
    うつで休職中に気をつける、健康的な食生活のポイントは次の3つです。
    朝・昼・夜3食きちんと取る:とくにうつの方は朝起きられなかったり、準備が出来なかったりで、朝食をとるのが難しいことも多いと思いますが、保存の効くシリアルと牛乳などを利用してみてはいかがでしょうか。そこにフルーツを入れられたらなお良いです。
     
    食品の種類を多くし、バランスよく食べる:野菜はシチューとかカレーとかスープとかにして煮込んでしまうと、たくさんとりやすいです。たまねぎ、じゃがいも、キャベツ、大根などの野菜は長持ちしますので無駄にしにくいです。最近は冷凍のほうれん草やかぼちゃ、などもうっていますので、うまく利用できるといいですね。
     
    ゆっくりよく噛んで食べる:大食いや早食いをすると血糖値が急上昇するだけでなく、満腹のサインが体に伝わりにくくなります。ゆっくりよく噛んで食べることで、満腹のサインが脳に伝わりやすくなり、結果として食事量を抑えることができます。
     

    詳しくはyoutubeで解説していますのでぜひ御覧ください。

     

    食べすぎてしまう人は、1食の中、ではなく1日の中で調整をする、1日の中で調整ができなかったら1週間の中で調整をすることを意識してください。そのために、食事の内容や運動については毎日、体重は週二回を目安に記録することが、有効です。農林水産省からフードダイアリーの用紙がでているので、これを使ってみるのも良いと思います。http://www.maff.go.jp/j/balance_guide/b_sizai/

     

    最後に、サプリメント等で栄養素を補えば同じなのでしょうか?観察研究ではオメガ3、葉酸、ビタミンD、セレンが低いとうつスコアが高い、ことが指摘されていますが、最新の研究結果では、サプリでの補充は意味がないどころか、むしろ悪い、というデータが出てきています。
     

    2019年3月号JAMA誌に掲載された研究によると、メンタルが落ち込んでいる人(うつスコアの高い人)が、オメガ3脂肪酸、セレン、葉酸、ビタミンD3、カルシウムのサプリを摂取しても、1年後のうつ病の発症を抑制することは出来ませんでした。(Effect of Multinutrient Supplementation and Food-Related Behavioral Activation Therapy on Prevention of Major Depressive Disorder Among Overweight or Obese Adults With Subsyndromal Depressive Symptoms The MooDFOOD Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019;321:858-868.)
     

    別の研究でもサプリはプラセボよりもうつスコアが悪い、というデータが出ており、メンタル不調の人がサプリを飲むのはおすすめ出来ません(Nutraceuticals for major depressive disorder- more is not merrier: An 8-week double-blind, randomised, controlled trial. J Affect Disord. 2019;245:1007-1015.)
     

    食事は体を作る源です。食生活を通して、内側からうつを良くして行けたらよいですね。

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