会社の人間関係、特に上司との付き合い方は、多くの方がうまくいかない、と悩んでいます。
米国2018年の調査では、35%の人が、仕事の最大のストレスが上司である、と答えました(ref)
また、2008年米国Gallup社の調査では退職理由のうち、17%が「マネジメント」でした。(日本の雇用動態調査では、マネジメントの項目がないため不明です。)
嫌な上司の類型は様々ありますが、私は大きく4つあると考えています。
Emotional、Micromanaging、Uncommunicative、Inconsistentです。
Emotionalというのは、例えば「気分によって反応が変わり、すごく優しいときもあれば、すごく冷たいときもある」、「質問しても感情的な答えがかえってくるだけで、問題解決につながらない」、「人を好き嫌いで判断し、嫌われると話をまるで聞いてもらえず、なにか言うと攻撃してくる」ような人です。
Micromanagingとは、とにかく細かく進捗をチェックしてくる人です。チェック対策に時間が使われ、肝心のプロジェクトが前進しないという本末転倒な事態を引き起こします。
Uncommunicativeとは、「すぐ怒鳴ったり、脅すようなことを言う」人や、「問題を抱えていても言わないで、ギリギリまで抱え込む」、「コミュニケーションが出来ず、何を考えているかわからない」人を指します。
Inconsistentとは、言っていることがコロコロ変わり、どこに向かえばよいかわからない人です。
このような上司は、部下の精神的な負担になるばかりでなく、会社組織の生産性を下げ、部下の身体的健康にまで影響を与えます。
仕事におけるチームのエンゲージメント(仕事への熱意)の70%は管理職に依ると言われており、管理職が悪いと生産性は50%低下し、利益は44%減少すると報告されています(Gallup study)
また、3100人のスウェーデン人を10年間追跡した研究では、悪いマネジメントの上司の下にいると、心筋梗塞などの虚血性心疾患が1.5倍に増加しました。(Managerial leadership and ischaemic heart disease among employees: the Swedish WOLF study. Occup Environ Med 2009;66:51–55.)
なお、仕事に起因する健康被害は、高い教育を受けている人ほど少ない、といわれています。ある研究では、大学院(17年)以上の教育歴がある人の仕事に起因する余命の減少はマイナス0.31年~1.02年であったのに対し、高卒以下(12年未満)ではマイナス1.4〜2.77年と推計されています。ただし本研究が行われた米国では、日本より格差が大きく、健康保険の給付等の状況が違う部分もあることには注意が必要です。
(Exposure to harmful workplace practices could account for inequality in life spans across different demographic groups. Health Affairs 2015;34:1761–1768)
さて、実際に嫌な上司とどう付き合っていけばよいのでしょうか?これに対して科学的な答えはありませんが、米国心理学会が出しているステイトメント(ref)は参考になります。(米国心理学会は1892年に創設され、会員数15万人のアメリカ最古で最大の心理学者の団体です。)
同学会の提唱する、嫌な上司との付き合い方は3つです。
1.上司がなぜ難しい行動をとるのか、理由を理解しようとする。
2.自分の負の感情をコントロールする。
3.問題解決に向かう雰囲気を作るよう働きかける。
この続きは、Youtubeで解説していますので、ぜひ御覧ください。
最後に、他人を変えることは出来ないが、自分の受け止め方は変えることができます。嫌な上司は、どういう風になったらいけないかを教えてくれます。そして、会社を辞めても潰しがきくような、自立した個になることが一番のリスクヘッジだと思います。