保健師・産業カウンセラーの徳永です。
メンタルヘルスケアにおいて、カウンセリングは非常に有用な方法です。海外ドラマではカウンセリングのシーンがしばしば出てきます。例えばSUITSというドラマ(ヒロインのレイチェル・ゼイン役のメーガン・マークルが英国王室ヘンリー王子と結婚したことでも有名です)でも、主人公で敏腕弁護士のハーヴィー・スペクターが、過去のトラウマからくるパニック障害をカウンセラーに相談していました。
☆対面型カウンセリングと電話相談
しかし日本で、どこでカウンセリングを受けられるのか、ご存知の方はまだまだ少ないのでは無いのでしょうか?例えば、私も所属し、産業カウンセラー資格の発行主体である一般社団法人日本産業カウンセラー協会は、全国37の相談室で対面型のカウンセリングを提供しています(1回50分6,200円)。また、「働く人の悩みホットライン」という電話相談を月~土曜日の15~20時に無料で行っています(1回30分まで)。
対面相談室:http://www.counselor.or.jp/consultation/tabid/292/Default.aspx
電話相談:http://www.counselor.or.jp/consultation/tabid/298/Default.aspx
☆年間1万人受診し、男女同数
2017年度(2017年4月1日〜2018年3月31日)にこの相談室を利用したのは4927人、電話相談を行ったのは5586人でした(http://www.counselor.or.jp/Portals/0/pdf/2.2017kekkashiryo.pdf)。
相談件数の合計は2015年以降、毎年1万人程度で安定しています。男女の内訳は相談室・電話相談ともに男女半々程度です。相談室の利用者は緩やかに女性が増え(2013年45%→2017年55%)、電話相談は逆に女性が減ってきています(2013年61%→51%)。女性の社会進出が進み、相談室を訪れる人が増えた結果なのかもしれません。
☆20代は職場、30代は自分、40代はメンタル、50・60代は家庭で悩む
相談内容は、20代は職場のこと、30代は自分のこと(性格や人間関係、生き方について)、40代はメンタル不調に関すること、50代と60代は家庭の問題(夫婦問題や親子関係)が多く寄せられています。それぞれの年代の課題を表しているものだと思います。20代は新社会人として職場のことで悩み、30代は不惑を前にして自分自身について悩みます。40代は自殺者数が最も多い年代ですが(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/jisatsu/16/dl/1-03.pdf)、やはりメンタルについての悩みが多いようです。50代、60代で家庭の問題が来るのが意外でしたが、子供がある程度大きくなり、夫婦のあり方を再度考え直すことが多いのでしょうか。
☆対面・電話相談は30-50代で8割。30代は減少し50代が増加傾向
年齢を見ると、相談室・電話相談のいずれも40代が最多で約3割を占め、30-50代の働き盛り世代で全体の8割です。2013年と2017年を比較すると、相談室・電話相談ともに30代が減少し(相談室26.7%→19.6%、電話33.6%→24.2%)、50代が増加しています(相談室17.1%→24.8%、電話12.6→22.7%)。相談室・電話の利用者にも少しずつ高齢化の波がきているのかもしれません。
☆LINEでのカウンセリングは10・20代が8割、女性が9割
一方で、「SNSカウンセリング」は様相が全く違います。厚生労働省の「自殺対策強化月間SNS相談事業」で、全国13の団体が平成30年3月1日から3月31日までの1ヶ月、SNS相談を実施した所、延べ10129件の相談がLINE等を通じて寄せられました(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12001000-Shakaiengokyoku-Shakai-Soumuka/0000204756.pdf)。LINE相談延べ件数が1000件を超えた4アカウント(7団体)についてみると、「10-20代の女性のみ」を対象とした1アカウント(BOND)を除外しても、10代・20代が6割を占め、BONDのアカウントも含めると、10代・20代で8割を占めました。また、相談者は女性が9割を占めていました。
☆LINEの利用者数は50代が最多
「LINEは若者で多く使われているから、たくさんの若者の相談がきたのだろう」、と考える方もいらっしゃるかもしれません。確かにLINE利用率は10代で80%、20代で96%、30代で92%、40代で74%、50代54%、60代24%と、若者で高い傾向にあります(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc111130.html)。しかし、利用者数ベースでみると実は50代が26%と最も多く、20代は19.3%、15-19歳は9.7%のみです(http://blog-at.line.me/archives/50511288.html)。
やはり、LINEというメディアを通じた相談が、10・20代の若者をひきつける、利便性の高いものなのではないかと思います。
☆まだ新しいSNSカウンセリングには課題も
もちろん産業カウンセラー協会と自殺対策SNS相談事業では、対象としている人が違いますが、直接の対面や電話はもっぱら年配の方のコミュニケーション手段となり、若者にはLINEなどのチャットやSNSを通じたアプローチが有効なのかもしれません。しかし、SNS相談はまだまだ始まったばかりです。「相談履歴が残るので、相談員が変わっても同じことを聞かずにすむ」「その場に居合わせない複数の専門家とも状況を共有して対応が可能」などのメリットが言われる一方で、「相手の反応が見えない、途中で反応が途絶えることもある」「SNSからリアルでの支援にどうつなげるか」などの課題も指摘されており、さらなるノウハウの蓄積が望まれます(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/jisatsu/18/dl/2-4.pdf)。
悩んでいる人が一歩踏み出すのには大変勇気とエネルギーが必要です。必要な人に必要な手助けが届くよう、アプローチの仕方を変えて行くことも心がけていきたいと思います。