うつ病の再休職率の高さと、復職支援プログラム=リワークについて以前のブログでご紹介しました。https://kenwork.co.jp/column/104/
しかしリワークでどのようなことをするのか、誰が使えるのか、どんな特徴があるのか、などについてネット上にあまり情報がなく、利用者にとってよくわからないのが現状です。東京都台東区にある「リワークセンター東京」に伺い、お話を聞いてきました。
リワークセンター東京の要点は次の6点です。
・同時に100人が通所し、年間400名が利用する最大級の復職支援専門施設である。
・利用は無料だが、公務員は利用不可。
・病名・居住地による制限は無いが、病状が安定しており、週5日午前中から通所できることが必要で、ハードルは比較的高い。
・支援計画策定時に主治医に加えて、会社とも詳細に情報共有を行なうことが特徴。
・通所期間は8-12週と短めだが、トータルで半年程度休職期間が残っていることが望ましい。
・復職率は86%と高い。
最大級の復職支援専門施設
リワークセンター東京は、東京障害者職業センターで行っていたリワーク支援を特化・拡充する目的で設立され、2014年4月から現在の稲荷町に移転しました。仏具の店が立ち並ぶ稲荷町駅から徒歩8分、下町情緒が残る落ち着いた町のビルの7階にあります。リワークに特化しているのは全国でここだけで、4半期で100名ずつ、年間約400名が利用する一大拠点です。虎ノ門の有名民間施設の利用者数が6年で800名であることを考えると、際立って大規模なのですが、実際に訪れてみると思ったよりも広くは感じません。
利用者の特徴
来所の経緯は6割が企業から、3割が主治医からの紹介、1割は本人が調べて来るそうです。利用者は30〜40代の男性が一番多く、初回の休職の方よりも2〜3回目の方が多いようです。
都民以外も利用可能で、居住地別では都内が7割、周辺3県(千葉県・埼玉県・神奈川県)から各1割、となっています。周辺3県から来られる方は、もともと都内の企業へ通勤していた方が多いようです。職種は、東京という場所柄、デスクワークの方が中心のようです。
入所の条件
リワークプログラムへの参加には、病状が落ち着いていることが必要です。具体的には、これまでのエピソードを思い出してもひどい抑うつ状態がでないこと、服薬の自己管理が出来ていること、入眠と起床リズムが安定していること、週5日連続して10時から12までに外出できること、生活リズム表が毎日記録できること、が条件となります。また、主治医の同意があること、休職中であること(退職していてはダメ)、公務員でないこと(独立行政法人職員はOK)も必要です。
プログラムが遂行可能であれば、疾患名や居住地での条件はありません。
実際の利用者はうつ病の方が多く、双極性障害や統合失調症の方は少ないようです。なお、参加希望者の状況によっては(例えば発達障害が問題の中心のようであれば)、別の施設を紹介することもあるようです。
利用料は、なんと、無料です。(民間のリワーク施設は自立支援医療を利用して1日1000円程度程度の自己負担があります。)
利用の流れ
次に利用の流れについてご紹介します。
はじめに、本人と担当カウンセラーとで面談を行い、病状の経過や現在の生活リズム、休職前の職務などについて話をします。その後、4週間の体験コースを受講します。体験コースは前半2週間・後半2週間に分かれ、前半は10-12時のプログラムに週5日参加します。後半は図書館などを利用し読書課題と振り返り課題を実施するセルフワークを行います。
その4週間の間に臨床心理士や精神保健福祉士などの資格を持つコーディネーターが会社担当者と連絡をとり、休職前の状況や職務、復職までの課題、復職に関わる制度・条件等について詳しく情報収集します。また、主治医から求職者の疾患の経過と現状、特性と配慮事項、見通しなどについて確認します。会社・主治医・本人の3者で情報共有した上で、個別の状況に応じた実施期間や目標、支援の内容を決めていきます。
プログラムの内容と期間
策定した支援計画に基づいて、リワークプログラムは月〜金曜日の10-12時と13-15時に行われます。内容は「講座」、「作業」、「集団課題」、「自主課題」の4セッションから成り立ちます。
「講座」は、自己理解を促進するための知識の習得を目指し、症状の自己管理やコミュニケーション・キャリアの見つめ直しを行います。「作業」は作業日報集計、物品請求書、数値チェック、計算ドリルを行い、集中力、持続力、疲労度合い、達成度合いなどをセルフチェックします。「集団課題」は、アサーションロールプレイ、テーマ討論を通じて、小集団での課題達成、コミュニケーションに関する自己理解の促進を目指します。「自主課題」はセンターや図書館などを利用し、資格の勉強や、会社からの課題などを行います。
10-15時のプログラムに慣れてきたら、9-10時、15-17時をセンター外でのセルフワークに当ててもらいます。過去の経緯をまとめたり、業務関係の読書や会社への報告書の作成などの課題を行います。
これらを組み合わせて計8-12週間行います。前後の調整も含めると、トータルで半年ほど休職期間が残っていることが望ましいそうです。
なお、リワークセンター東京では、利用者の名札に名前を書くことはなく、人数も多いことから利用者同士の個人的な交流はあまり活発ではないようです。(立川や千葉、埼玉のセンターは20人/日程度とより小規模なこともあり、もう少し仲良くなりやすいかもしれません)
終了時と復職率
リワークプログラムの終了時、センターから利用状況(出席状況や人との関わり方等)を会社・主治医に報告しますが、直接職能・復職判定は行いません。本人から「休職期間中にリワークでどのような活動をしてきたか」を会社に報告してもらいます。これまでの統計では86%の方が復職されているそうです。
おわりに
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。もちろんすべての方に勧められるわけではありませんが、年間400人を送り出す大規模リワーク施設のノウハウはあなたの力になるはずです。自己理解を深め、プログラムで習得した知識や体調管理の方法をもとに、再び社会で活躍していって欲しいと思います。